定期調査時の体験談

調査業務における体験談 vol.29新築のお客さま宅でも

新居浜事業所 調査員 梶田 一郎

調査業務に従事して20数年になりますが、お客さまとの応対では色々な出来事があります。その中でも屋内への立ち入りや、停電しての調査業務には、不安や煩わしさを感じているお客さまも多々おられました。そんなひとつの事例を紹介させていただきます。

ある新築のお宅を訪問した時のことです。奥さまが出て来られたので、「四国電力(株)からの委託により4年に一度の電気の安全調査にお伺いしました」とご挨拶したところ、「うちは、新築だから電気設備の点検など必要ないでしょう」と、少し疑わしそうなご様子でした。そこで、お客さまの大切な財産を守る重要な電気設備の点検調査を無償でうけられることや、電気は目で見ただけでは分からないので、新築でも点検が必要なことなどを丁寧に説明しました。するとようやく調査訪問の趣旨をご理解いただき安心なさったようなので、早速、点検調査業務を開始しました。

まず引込口直近の計器ボックスの主スイッチ(ブレーカ)で漏電を測定したところ、漏れ電流計がオーバーレンジ(OL)を表示しました。レンジを切り替えて測定するとなんと8.3Aを表示しました。通常では考えられない数値で、明らかに漏電です。そこで奥さまに「漏電しているので、その場所を探すためには、停電して絶縁測定をする必要があります」とお伝えしました。しかし「洗濯している最中だし、新築なのに本当に漏電しているの?」と疑わしそうなご様子です。このままでは、漏電火災や感電事故に至る恐れもある旨を説明し、やっと停電しての安全調査に協力していただきました。早速、屋内の主漏電遮断器(ELB)を切り測定しましたが、依然として8.3A流れています。絶縁抵抗を測定したところ0MΩで、引込口から屋内主ELBまでの間の漏電と判断できました。奥さまに「最近何か工事をしていませんか?」とたずねますと「カーポートの工事をしました」とのことでした。そこで工事した辺りを細かく点検していくと、カーポートを壁に取り付けているネジが、たまたま壁の内側を這っている電線を貫通しているようで、これが原因と判断できました。

奥さまに調査の結果を報告したところ、驚かれて業者への対応を頼まれたので、直ちに住宅メーカーに状況を説明し、早々の処置を依頼しました。当日夕方、奥さまから電話があり、無事改修が完了したご報告とていねいな感謝の言葉を頂戴しました。

一般のご家庭にはいろいろな訪問業者が来て不審な勧誘を受けることが多い昨今、お客さまも警戒されていることが少なくありません。今回の事例では、真摯に電気安全の必要性や訪問の目的を丁寧に説明し、ご納得いただいたことが漏電発見につながりました。今後も的確な電気の安全調査により、お客さまの大切な財産を守っていくのだという強い信念をもって、お客さまとのコミュニケーションを大切にしながら、調査業務に励んで参りたいと思います。