電気事故に学ぼう82予定外作業(作業準備不良)による感電死傷事故
2022年度に四国支部管内で発生した電気事故について、電気関係報告規則第3条の規定に基づき、事業用電気工作物の設置者から38件の報告を受けています(2022年11月1日現在)。そのうち、感電死傷事故は4件発生しています。
過去5年間(2017~2021年度)においては、四国支部管内で4件の感電死傷事故が発生しています。
今回は、今年度に発生した感電死傷事故の事例を紹介します。
中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
感電死傷事故
使用電圧 | 6,600V |
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設置場所 | 需要設備 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 自社選任 |
事故発生月 | 7月 |
供給支障電力・時間 | - |
事故発生の電気工作物 | 計器用変圧器 |
事故原因 | 感電・作業者 (作業準備不良) |
経験年数・年齢 | — |
天候 | 曇り |
事故概要
下請会社の作業員である被災者は、キュービクルへの高圧ケーブル引き込みにあたり、ケーブルのくせ取りと余長確認を行うため、作業指示がない状態で盤内に入り作業した。
被災者は、CT(変流器)の2次側の無電圧を事前の検電作業で確認し、盤内部全体が停電していると勘違いしていた(VT※は充電中)。
被災者は、立ち上がった際に充電中のVTに接触し感電した。
※VT…計器用変圧器
事故原因
- ⑴ 予定外作業の実施
・ケーブルのくせ取りと余長確認については、作業指示が出ていなかった。 - ⑵ 安全対策が不十分
・VTの検電や絶縁シートによる養生がなかった。 - ⑶ 停電判断の間違い
・CTが停電しているからVTも停電していると勘違いした。 - ⑷ 安全作業計画書の未作成(請負会社)
・活線近接作業でないと勘違いした。
・安全作業計画書を作成していなかった。 - ⑸ 発注担当者等の事前確認不足(発注者)
・発注者は工事開始日を認識していたものの、工事計画の事前確認をしていなかった。
再発防止対策
- ⑴ 予定外作業の禁止
・安全に対する検証ができないため原則禁止とする。 - ⑵ 安全対策の徹底
・作業点上位2点開放、短絡接地取り付け、絶縁シートによる養生を行う。 - ⑶ 停電部・充電部の把握と見える化
・単線結線図と現場結線の確認を実施する。
・現場へ充電範囲を表示する。
・検電を確実に実施する。 - ⑷ 安全作業計画書の作成と管理(請負会社)
・工事をリスト化し、安全作業計画書の審査状況を把握する。 - ⑸ 工事計画書の事前承認の徹底(発注者)
・工事をリスト化し、工事計画書の審査状況を把握する。
災害時(被災者は起き上がった際にVTと右手が接触し感電)
災害後(VT短絡により損傷)
自家用電気工作物設置者の皆さまへ
今回の感電死傷事故は、予定外作業を実施し事故に至った事象です。予定外作業は原則として禁止し、事前に必要な安全対策を十分検討した上で、作業計画書を作成してください。主任技術者におかれましては、安全対策の妥当性について確認をお願いします。
また、今回の感電死傷事故は、下請会社の作業員が被災した事故でもあります。事前に作成した作業計画を下請会社、請負会社および発注者(自家用電気工作物設置者)間で共有できる体制整備を行い、安全な作業の実施に努めてください。
2022年度四国管内電気事故発生件数
(2022年11月1日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
---|---|
感電死傷事故 | 4 |
感電以外の死傷事故 | 0 |
電気火災事故 | 1 |
他物損傷・機能被害事故 | 0 |
主要電気工作物破損事故 (うち太陽電池発電所の逆変換装置によるもの) |
27 (10) |
発電支障事故 | 0 |
供給支障事故 | 0 |
波及事故 | 5 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 1 |
計 | 38 |