電気事故に学ぼう70自然現象(風雨)および保守不備(保守不完全)による波及事故
平成30年度の四国支部管内における波及事故については、平成30年10月31日現在、4件発生しています。
四国支部管内における過去5年間(平成25〜29年度)に発生した波及事故件数は、41件で、そのうち自然現象(風雨、雷)を原因とするものが13件発生しています。
今回は、自然現象(風雨)および保守不備(保守不完全)による波及事故事例を紹介します。
資料:中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6,600V |
---|---|
設置場所 | 工場 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 未選任 |
事故発生月 | 7月 |
供給支障電力・時間 | 約1,300kW 1時間21分 |
事故発生の電気工作物 | 高圧CVケーブル |
事故原因 | 自然現象(風雨) 保守不備(保守不完全) |
経験年数・年齢 | - |
天候 | 台風 |
事故概要
台風に伴う強風により、柱上の高圧CVケーブル端末部に近接している樹木が接触し、短絡・地絡事故が発生、高圧気中開閉器に地絡保護装置設置がされていたが、故障のため動作しなかったことから、波及事故となった。
事故原因
- 台風による暴風雨で、引込柱に近接する樹木がしなり、CVケーブル端末部に接触した。
- 主任技術者が未選任で、電気工作物の点検が実施されておらず、電気工作物と樹木との離隔距離不足や地絡保護装置の故障を確認できず、適切な保安活動が実施できていなかった。
再発防止対策
- 主任技術者を選任し、保安規程に基づき電気工作物の点検を実施する。
- 高圧気中開閉器(保護装置を含む)、CVケーブル等、高圧電気工作物を取り替えた。
自家用電気工作物設置者の皆さまへ
自家用電気工作物の保安確保は、設置者の自己責任原則に基づく自主保安により実施されていますが、電気事業法では自主保安の要となる設置者の義務について以下のように定められています。
技術基準適合維持義務(電気事業法第39条)
設置者は電気工作物を技術基準に適合するよう設置し、維持する義務があることが規定されています。電気工作物が技術基準に適合していることは、保安規程で定める保安体制、保安活動により確認することとなります。
保安規程遵守義務(電気事業法第42条)
設置者は電気工作物の工事、維持および運用に関する保安を確保するため保安規程を定め、設置者、従業者は保安規程を遵守する義務があることが規定されています。保安規程で定める保安体制、保安活動が、主任技術者の監督に係る保安業務となります。
主任技術者選任義務(電気事業法43条)
設置者は電気工作物の工事、維持および運用に関する保安の監督を行わせるため電気主任技術者を選任する義務があることが規定されています。また、保安の業務に従事する者は主任技術者の指示に従う義務があることが規定されています。
今回の波及事故は、直接的には台風による樹木接触が原因ですが、接触の原因となった樹木との隔離距離不足や保護装置の故障については、電気主任技術者を選任し、保安規程に基づいた点検を実施していれば容易に確認可能であり、対策を講じることにより未然に防止することができた事故でした。
設置者の皆さまにおかれましては、電気事業法における設置者の義務について十分理解いただき、各事業場にあった自主保安体制を構築いただけますようお願いします。
平成30年度四国管内電気事故発生件数
(平成30年10月31日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
---|---|
感電死傷事故 | 0 |
感電以外の死傷事故 | 0 |
電気火災事故 | 0 |
他物損傷・機能被害事故 | 0 |
主要電気工作物破損事故 | 24 |
発電支障事故 | 0 |
供給支障事故 | 0 |
波及事故 | 4 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 0 |
計 | 28 |