電気事故に学ぼう66保守不備(自然劣化)による波及事故
平成29年度の四国支部管内における波及事故については、11月30日現在、4件発生しています。
四国支部管内における過去5年間(平成24〜28年度)に発生した波及事故(計50件)の主な原因は、自然現象(雷)(19件)で、ついで、保守不備(自然劣化)(15件)、他物接触(7件)、保守不備(保守不完全)(5件)などとなっています。(※)
今回は、保守不備(自然劣化)による波及事故例を紹介します。
※1件の事故が2以上の原因による場合があるため、原因件数の累計と事故件数の累計は異なります。
資料:中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6.6kV |
---|---|
設置場所 | 事務所ビル |
事故点の電圧 | 6.6kV |
主任技術者の選任形態 | 兼任 |
事故発生月 | 8月 |
供給支障電力・時間 | 976kW 83分 |
事故発生の電気工作物 | 高圧引き込みケーブル CVT (100sq×3C×300m) 1992年製 |
事故原因 | 保守不備 (自然劣化) |
経験年数・年齢 | - |
天候 | 晴 |
事故概要
電力会社の配電線が地絡継電器の動作によりトリップし、当該配電線にて停電事故が発生した。電力会社の調査の結果、当事業所の地絡事故による波及事故であることが判明した。
主任技術者が事故原因について調査したところ、予備線側引込ケーブルが経年劣化により絶縁破壊し、地絡事故に至ったと推定した。また、地絡が間欠的に発生したため、当事業所の地絡継電器は動作していたものの、設定された動作特性では電力会社の地絡継電器よりも先に事故を検出できなかったため、波及事故に至ったものと推定した。
事故原因
事故発生前の状況として、平成27年12月に本線、予備線とも区分開閉器の更新を実施、平成28年11月の年次点検においても高圧受電設備の絶縁抵抗、保護継電器の動作特性等に異常はなかったが、高圧ケーブルについてメーカーの更新推奨期間を経過していることから取替の検討を行っていた。
事故後の調査の結果から、高圧ケーブルの絶縁破壊については、絶縁抵抗測定、絶縁耐力試験の結果から、予備線側引込みケーブルS相の絶縁破壊であることを確認した。事故点については、ケーブル外観点検等の結果、地中埋設(管路)部のケーブル外装に2mm程度の穴があり、外装ケーブルを剥ぎ取り確認したところ、シース部が損傷していることを確認した。当該高圧ケーブルは施設後24年経過していることから、経年劣化で絶縁破壊に至ったと推定した。
また、地絡継電器の動作不適正については、現地にて区分開閉器および制御装置等に異常が確認されなかったことから、メーカーにて詳細調査を実施した結果、設定していた動作特性では、今回のような間欠地絡事故について未検出または動作時間の遅延が発生することが確認された。
今回の事故では、電力会社の記録でも間欠地絡が確認されていることから、動作遅延により電力会社の地絡継電器の動作後に地絡事故を検出し、区分開閉器を開放したため、配電線側の波及事故となったと推定した。
再発防止対策
- 高圧ケーブルの交換(本線・予備線とも)を実施した。同時に、制御線の交換も実施した。
- 下記項目の実施を検討することとした。
- 高圧ケーブルの定期的な交換。
- 高圧ケーブルの絶縁測定の回数、時期、時間の検討。
- 微地絡に対応した継電器(高圧絶縁監視機能付方向性SOG制御装置)の設置。
- 受電設備についても、竣工後年数が経過していることから、経年での不良も考えられるため、各種保護継電器の更新や、受電設備全体の更改。
平成29年度四国管内電気事故発生件数
(平成29年11月30日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
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感電死傷事故 | 1 |
感電以外の死傷事故 | 0 |
電気火災事故 | 0 |
他物損傷・機能被害事故 | 2 |
主要電気工作物破損事故 | 26 |
発電支障事故 | 0 |
供給支障事故 | 0 |
波及事故 | 4 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 1 |
計 | 34 |