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見えない「でんき」が見えてくる! だから電気はおもしろい21
3本! 本部 保安事業部総括課 副長
細川 真由美

高知で「おきゃく」といえば、宴会のこと。
お祭りやお祝い事があると、大勢の親戚知人、近所の人たちを家に招待して、皿鉢(さわち)料理を並べ、楽しくお酒を酌み交わすのが高知のおきゃく。
  今では、おきゃくの場所は宴会場が多くなり、各家々でのおきゃくは少なくなっていますが、私が子供のころは、家で年に何回もおきゃくがありました。
  おきゃくの席の隅のほうには、ジュースを飲みながら皿鉢料理を食べる女性と子供の席が確保されます。子供の頃は、そこで父を含め、酔っぱらいのおじさんたちの一部始終を見ることができました。
  はじめは静かに飲んでいたおじさんたちが、真っ赤な顔になり、にぎやかに話しだして、だんだん声が大きくなり、そのうち2時間ほど経過すると、ひとりふたりと座敷で寝る人が発生。
  このあたりで帰っていく人もポツポツいて、だんだん飲み続けている人が減ってきたのに、「うちのお父ちゃん、まだ飲みゆう」というパターンが多かったですね。
  ある時、うちのお父ちゃんは近所の家で飲んでいて、帰ってきたらズボンがドロだらけ。
  「『しばてん』と田んぼで相撲を取りよったがよ」と言う祖母の言葉に、私は「しばてんは本当におるがや。あの田んぼにおるがやろうか」と、それ以降、それらしき田んぼの側を歩く時は用心するようになりました。
  しばてんは、「おんちゃん、すも(相撲)取ろ取ろぅちや」と言って相撲をねだる河童に似た男の子の妖怪。
  高知では「しばてん音頭」という唄で、今でも活躍しています。
  しばてん音頭に合わせて踊る、ユーモラスな「しばてん踊り」というのもあります。
  私も小学生のころまでは踊ったことがあったのですが、昨年、お座敷遊びで30数年ぶりにしばてん踊りを踊りました。
  手ぬぐいを頭からかぶってしばてん踊りを踊るのは、大人になると少々恥ずかしいものですが、見る人も踊る人も笑いが絶えず、ストレス解消になります。
高知のお座敷遊びといえば、ほかに有名なのは「可杯(べくはい)」、「箸拳(はしけん)」などがあります。
  可杯は、お面の形をした三つの杯が必須アイテム。「てんぐ」と「ひょっとこ」と「おかめ」の杯があります。
  「べろべろの神さまは、正直な神さまで、…」と歌いながら三つの杯の絵が書かれたコマを回し、コマが指した方向にいた人が、出た絵の杯でお酒を飲みます。可杯は初めての人でも、また何人でも遊べます。
  現在一人暮らしの我が家には、可杯セットが2セットもあります。いつか有効活用ができるだろうと思って大事に仕舞ってあるのですが…。
  しかし、こうした遊びも各家々でのおきゃくが少なくなった今では、めったに見られなくなりました。高知のおきゃくの伝統的な遊びとして後世に残したいものです。
  箸拳は、二人が向き合い、短い赤箸を使って数を当てるゲームで、負けると杯に入ったお酒を飲みます。
  箸拳は幕末に高知県西部の宿毛市で始まったとのこと。
  毎年10月1日の日本酒の日には「土佐はし拳全日本選手権大会」が高知市で開催されています。箸拳の有段者や名人がいて、単なる遊びではありません。
  箸拳のルールは、向き合った二人がまずジャンケンをして先攻、後攻を決めます。
  そしてお互いに両手を後ろに回して、相手から見えないようにして、箸を3本ずつ持ちます。
  まず後攻が0〜3本の箸を握って、相手から見えないように前に出して「いらっしゃい!」と言います。
  次に先攻が相手の数を予想して、自分の箸と足して3本になるように箸を握って、相手から見えないように前に出して「3本!」と言います。
  続いて後攻が相手の箸と合計した数を予想して言うのですが、この時「1本」か「5本」しか言えないというルールがあります。
  そして二人で持っている箸を見せて数が合っていた人が勝ちです。
  ベテラン同士の勝負は、二人が掛け合う啖呵を切るような言葉だけでも圧倒されてしまいます。
  箸拳は、お互いが威勢のいい掛け声を出し合い、テンポよく勝負が決まります。見ていて気持ちがいいのですが、私などは全くサマになりません。
ある晩、行きつけの居酒屋さんで飲んでいると、お店の人が唐突に「電気の引込線は何本?」と聞いてきました。
  箸拳のノリで「3本!」と答えることができたらいいのだけれど、この答えは「だいたい3本!?」。
  なんか切れの悪い答えですね。もっとも、電気の世界で「切れる」というと停電を連想して、あまりよろしくないのでしょうが…。
  一般的に「電灯」と呼ばれている引込線は、住宅などへ供給している場合、ほとんど電線3本の単相3線式200/100V(100Vと200Vが使用できる)ですが、電線2本の単相2線式100Vの場合もあります。
  単相3線式は略して「単3」と呼ばれています。3本の電線のうちの2本の組み合わせによって100Vまたは200Vが使用できます。単相3線式でも単相2線式でも電気料金単価は同じです。
  「動力」と呼ばれている引込線は、電線3本の3相3線式200Vです。
  また「高圧」の引込線は、電線3本の3相3線式6000Vです。
  3相は単相が3組になったものです。単相1組では2本の電線が必要ですが、3相では各相を時間的に120度ずらすことで、戻りの電線が不要になり、6本分の電力を3本の電線で送ることができるのです。
  それで3相の電線は「3本!」なのですが、単相は「だいたい3本だけど2本の場合もあって…」なのです。
私の飲み友だちのTさんは、箸拳の名人で、いろんな大会で優勝経験があります。
  70才を超えて現役で、仕事もゴルフもお酒もと元気な方です。
  いつもニコニコしていて、みんなを和ませてくれるのですが、いざ箸拳となると勝負師に変身!
  Tさんが「3本!」と箸拳をはじめると、私たちは、「Tちゃん、がんばって〜」と黄色い声援を送っています。
  Tさんのおかげで私も若返っているかも…気持ちだけ。

 
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