電気事故に学ぼう

電気事故に学ぼう84パワーコンディショナーの破損事故

 2022年度に四国管内で発生した電気事故について、電気関係報告規則第3条の規定に基づき、事業用電気工作物の設置者から52件の報告を受けました。そのうち、主要電気工作物破損事故が37件発生しています。
主要電気工作物破損事故とは、電気設備を構成する機器の中でも重要な役目を持つとして法令で定められた機器が破損する事故であり、設備の運用が長期にわたり停止するなどの大きな影響をおよぼす重大な事故です。また、破損箇所、破損内容によっては設備外の生命や財産に被害がおよぶ事故に発展する恐れもあります。
過去5年間(2018年度〜2022年度)においても、四国管内で214件主要電気工作物破損事故が発生しています。そのうち、太陽電池発電所における事故が135件発生し、その中でもパワーコンディショナーの故障が多く報告されています。
なお、パワーコンディショナーの故障は、①製品交換を伴う甚大な故障と、②部品や基板の交換などで補修できる軽微な故障の2種類に大別され、②のような軽微な故障のみの場合は、2023年3月31日から事故報告の対象から除外されています。
 今回は、太陽電池発電所の事故の中でも大半を占める、パワーコンディショナーの破損事故事例を紹介します。

中国四国産業保安監督部四国支部 電力安全課

主要電気工作物破損事故

使用電圧 200V
設置場所 太陽電池発電所
事故点の電圧 200V
主任技術者の選任形態 外部委託
事故発生月 不明
供給支障電力・時間
事故発生の電気工作物 パワーコンディショナー
事故原因 自然現象(雷)
経験年数・年齢
天候

事故概要

運転監視装置で発電が停止していることを確認、現場調査により、パワーコンディショナー(以下PCSという。)交流出力側回路に設置している漏電遮断器が動作し、また、PCSも故障表示が発信し停止していることを確認した。電線路、PCSの絶縁抵抗測定の結果、絶縁不良を確認した。メーカーでの原因調査によりPCSファンユニットの絶縁不良を確認、PCSを交換し復旧した。

事故原因

過去の落雷等に起因する外来サージ・ノイズ等が交流側からPCSの入出力基板部分に印加され、PCSファンユニットが絶縁不良に至ったものと推定される。

動作した受電設備内の漏電遮断器

パワーコンディショナー表示パネル(交流不足電圧で解列中)

太陽電池発電設備設置者および所有者等の皆さまへ

このような落雷等による主要電気工作物の破損事故の他にも、近年、台風や豪雨の影響による太陽電池発電設備の破損・浸水事故が発生しています。
太陽電池発電設備の感電事故等を防止するため、設置者および所有者等におかれましては、以下の点にご注意いただきますようお願いいたします。
また、台風や豪雨による被害が多い時期までに、太陽電池発電設備の入念な点検を実施するなど、十分な対策・備えをお願いします。

1. 破損・浸水してしまった時の対応

破損・浸水した場合であっても、太陽電池パネルは光が当たれば発電することが可能です。このため、素手で触ると感電するおそれがあります。周囲にロープを張るなど、関係者以外が不用意に立ち入らないような対策を行ってください。
   被害の対処に当たっては、50kW未満の太陽電池発電設備の場合は販売施工業者に、50kW以上の太陽電池発電設備の場合は選任されている電気主任技術者に連絡し、太陽電池発電設備に充分な知見のある者が復旧作業を行うようにしてください。
   復旧作業等でやむを得ず取り扱う場合は、ゴム手袋、ゴム長靴着用等の感電対策を行ってください。浸水した場合は、水が引いた後であっても集電箱内部やパワーコンディショナー内部に水分が残っていることも考えられます。この場合、触ると感電するおそれがありますので、感電対策を行い、感電事故防止に努めてください。

2. 産業保安監督部への事故報告

  10kW以上の太陽電池発電設備の所有者等におかれましては、電気関係報告規則に基づく事故報告が必要となる場合がありますので、被害の発生を知ってから24時間以内に、最寄りの産業保安監督部へ報告してください。
 例えば、太陽電池パネル(モジュール)や支持物、柵やへいなどの電気工作物の破損等を伴う土砂崩れや土砂流出が発生し、道路等の閉塞、人や車両の通行の阻害等、第三者の物件に対して本来の機能の一部を損なわせた場合、他の物件への損傷事故に該当し、事故報告の対象となります。
  また、電気工作物の破損等を伴わない土砂流出の場合であっても、土砂流出の発生の主たる原因が当該支持物を施設したことによる影響と判断されるものについては、他の物件への損傷事故に該当し、事故報告の対象となります。
  これは、電気事業法における技術基準において、太陽電池パネル(モジュール)の支持物を土地に自立して施設する場合は、施設による土砂の流出または崩落等が発生し、公衆安全に影響を与えることが無いよう施設することが規定されているためです。

2022年度四国管内電気事故発生件数

事故種別 事故発生件数
感電死傷事故 5
感電以外の死傷事故 0
電気火災事故 1
他物損傷・機能被害事故 0
主要電気工作物破損事故
(うち太陽電池発電所の逆変換装置によるもの)
37
(9)
発電支障事故 0
供給支障事故 0
波及事故 8
ダム異常放流事故 0
社会的に影響を及ぼした事故 1
52