電気事故に学ぼう72保守不備(保守不完全)による波及事故
平成30年度における中国四国産業保安監督部四国支部管内の電気事故は、平成31年3月1日現在、37件発生しています。このうち波及事故は6件発生しており、原因別に見ると、自然現象(雷、風雨)3件、保守不備(保守不完全)2件、故意過失(作業者の過失、火災)2件となっています。(1件の事故で複数の原因が確認されたものがあります。)
今回は、保守不備(保守不完全)による波及事故事例を紹介します。保守不完全を原因とする事故は、設置者および主任技術者の適切な保守管理により防止することが可能です。特に、点検で発見された不具合等への迅速且つ適切な対応を行うことにより事故の未然防止に努めてください。
資料:中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課
波及事故
使用電圧 | 6,600V |
---|---|
設置場所 | 工場 |
事故点の電圧 | 6,600V |
主任技術者の選任形態 | 外部委託 |
事故発生月 | 2月 |
供給支障電力・時間 | 約1,112kW 1時間56分 |
事故発生の電気工作物 | 進相コンデンサ |
事故原因 | 保守不備(保守不完全) |
経験年数・年齢 | - |
天候 | 曇 |
事故概要
当事業場の受電設備がキュービクル式・PF-S型であり、設備容量が小さいことから開閉装置は主遮断装置のLBS(高圧限流ヒューズ付)のみで、進相コンデンサ専用の開閉器および保護装置は設置されていなかった。主任技術者は点検の結果に問題はないが、受電設備が設置後約30年経過していること、進相コンデンサ外箱に発錆があることから、設置者に取替依頼を行っていた。
事故発生時、電力会社変電所にて配電線地絡事故(Vo=3,400V)を検出し、当該配電線が停電、同時刻に主任技術者も遠隔監視装置の停電通報を受信した。 主任技術者が現場にて受電設備の状況を確認したところ、LBSのR相高圧限流ヒューズ、碍子部が激しく破損していること、進相コンデンサが膨張していること、区分開閉器は投入状態であり、地絡保護装置が動作していなかったことを確認した。
調査の結果から、事故は、進相コンデンサが経年劣化によるものと思われる絶縁劣化で内部短絡が発生、配電線系統の関係から短絡電流がヒューズの遮断電流よりも小さいために遮断できず、短絡電流が継続したことにより高圧限流ヒューズおよびLBSが破損し、その際のアークにより短絡、地絡事故となったと推定された。また、地絡保護装置の制御電源を変圧器2次側(RS相)から供給していたことから、事故と同時に停電したため動作せず、波及事故となったものと推定された。
事故原因
- 劣化兆候が見られる電気工作物(進相コンデンサ)の取替を行わなかった。
- 進相コンデンサの短絡保護が十分でなかった。
再発防止対策
- 進相コンデンサ取替およびコンデンサ用LBSを設置した。
- 主遮断用LBSの電源側から地絡保護装置の電源を供給するように改修した。
- 電気工作物(PF含む)は更新推奨時期を踏まえて計画的に更新を行う。
長期間使用している電気工作物は、定期的な点検により健全性を確認していても、部材の老朽化により故障する確率は高くなっています。各機器の更新推奨時期等を踏まえた計画的な設備更新を行うことで、感電事故や波及事故等の影響の大きな電気事故を未然に防いでいただきますようお願いします。
高圧受電設備更新の目安
平成30年度四国管内電気事故発生件数
(平成31年3月1日現在)
事故種別 | 事故発生件数 |
---|---|
感電死傷事故 | 0 |
感電以外の死傷事故 | 0 |
電気火災事故 | 0 |
他物損傷・機能被害事故 | 0 |
主要電気工作物破損事故 | 30 |
発電支障事故 | 0 |
供給支障事故 | 0 |
波及事故 | 6 |
ダム異常放流事故 | 0 |
社会的に影響を及ぼした事故 | 1 |
計 | 37 |