電気事故に学ぼう

電気事故に学ぼう62作業者の過失による波及事故

平成28年度の四国支部管内における波及事故については、11月30日現在、6件発生しています。
四国支部管内における過去5年間(平成23〜27年度)に発生した波及事故(計56件)の主な原因は、自然現象(雷)(23件)で、ついで、自然劣化(15件)などとなっています。(※)
今回は、作業者の過失による波及事故例を紹介します。
※1件の事故が2以上の原因による場合があるため、原因件数の累計と事故件数の累計は異なります。

資料:中国四国産業保安監督部 四国支部 電力安全課

波及事故

使用電圧 6.6kV
設置場所 需要設備
事故点の電圧 6.6kV
主任技術者の選任形態 選任
事故発生月 9月
供給支障電力・時間 8,742kW
4分
事故発生の電気工作物 電力引込用高圧ケーブル
事故原因 作業者の過失
経験年数・年齢 -
天候

事故概要

事業所の設備交換工事に伴う電力ケーブル移設のため、足場組立作業が行われていた際に、設備工事業者の作業者の不注意で、地上にあった資材(足場材:単管 長さ1.5m)がドライエリア内に落下し、その底部に敷設されていた、電力会社設備の配電線高圧分岐装置(DG付UGS)と油入遮断器(OCB)間の、電力引込用高圧ケーブルを損傷したことにより、当該事業所および周辺地域(1,447戸)を停電させた。

事故原因

仮置きしていた作業に使用する予定の資材が、設備工事業者の作業者の不注意によりドライエリア内に落下し、電力引込用高圧ケーブルを損傷した。(写真1)
また、この際、資材を通じて導体から対地に大きな地絡電流が瞬間的に流れたが、資材がケーブル導体から離れたことにより、地絡方向継電器を動作させるための必要な電流が流れなかったため、事故発生当初は、変電所に設置されている、地絡過電圧のみで動作する微地絡選択継電器(FGS)によって、事故点除去が行われ、波及事故となった。(図1の②)
その後、変電所から事故回線に再送電した際に、事故点において、絶縁体の絶縁破壊が進行し、地絡方向継電器が動作するために必要な電流が流れたことにより、配電線高圧分岐装置が解放(正常勤作)され、事故点を除去し、停電が解消された。(図1の③)
なお、動作に必要な地絡電流が流れた場合、通常は時限協調により、①配電線高圧分岐装置→②変電所の配電線遮断器の順番で、自動遮断する構成となっている。

再発防止対策

1. 工事中における再発防止対策

  1. ハード対策
    1. ドライエリア内に、養生毛布を敷設。
    2. ケーブルラックを設置し、配線を収納。
    3. ゴムシート、コンパネ、端太角、防炎シート等を用いて、配線養生を実施。
  2. ソフト対策
    1. 作業に使用する資材は、仮置きであっても、安定な場所・状況に置くように計画し、各設備工事業者にも工事受注者から周知徹底する。
    2. 事業所機能に影響する重要なインフラ(配管・配線)の近傍作業を実施する際は、以下の作業ルールに則り、同様の事象が発生しないよう努める。 〔作業ルール〕
      • 埋設、露出の状況を問わず、設計図、施工図および現地調査でインフラのルートを確認し、種別を表示して見える化する。
      • 原則一週間前までに、現場作業の監督員・事業所の中央管理室へ、当該作業の内容および作業手順を説明し、了解を得る。その際、特別な注意事項の確認を行う。
      • 別途設備工事業者(電気・衛生・空調)へ、必要事項を連絡し、業者間での情報共有を図る。作業時の養生方法・状態について、別途設備工事業者にも確認し、確実な養生の状態にて本作業へ移行する。
      • 作業を行う設備工事業者に対し、作業前に図面等を用いて、了解を得た作業手順と注意事項の周知徹底を行う。
      • 重要なインフラの直上および直下での作業を実施する際は、工事受注者職員が立会、監視人を配備し、不安全行動のないよう確認しながら作業を行う。
      • 作業開始時および終了時の報告を、発注者の担当者に行う。

2. 今後の再発防止対策(図2)

  1. ケーブル保護対策
    1. ドライエリア内の側壁(ケーブル立下がり部)に敷設している、すべてのケーブルラックに蓋を新設する。
    2. ドライエリア底部に敷設しているケーブルラックの上部に、縞鋼板を設置し、高圧および低圧ケーブルの保護を行う。
    3. ケーブル可動部においては、現状のスパイラル保護の上から、更にゴムシートを巻き付け、保護を行う。
  2. 落下防止対策
    1. グランドレベルに、飛来・飛散防止用防護ネット(ラッセルネット)を設置するとともに、落下についての注意喚起を図る。
    2. 事業所建屋のB1F床面と同レベル部のドライエリア内に、グレーチングを設置し、重量物の落下を食い止める構造とする。

平成28年度四国管内電気事故発生件数

(平成28年11月30日現在)

事故種別 事故発生件数
感電死傷事故 2
感電以外の死傷事故 0
電気火災事故 0
他物損傷・機能被害事故 0
主要電気工作物破損事故 8
発電支障事故 2
供給支障事故 0
波及事故 6
ダム異常放流事故 0
社会的に影響を及ぼした事故 1
19