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見えない「でんき」が見えてくる! だから電気はおもしろい18
機能低下 高知支部 お客さまサービス課 契約係長
細川 真由美
冬 の休日の朝、窓からスカッと晴れた空を見たら何だか気分が良くなって、「そうだ!最近オープンしたあのホテルのおしゃれなレストランで朝食をとろう!」と思い立ち、コートを着て背筋を伸ばして出かけました。
  レストランに着くと8人がけのカウンターの隅に年配の男性がひとり座っていたので、反対側の隅に座ることにしました。
  モーニングセットをたのんで雑誌を見ていると、しばらくしてカウンター隅の年配の男性が「おはようございます」と言うのが聞こえました。気にせず雑誌を見ていると、また「おはようございます」と、今度は私の方に声かけてきたのがわかり、顔を上げてそちらを見ると年配の男性は顔見知りの方でした。
  「あらっ! 全然気が付かず、申し訳ありません。素敵な紳士がいらっしゃるとは思っていたのですが」「私も素敵な女性が来たと思っていましたよ。それにしてもお久しぶりですね」「そうですね」とご挨拶をしました。
  席が離れているので、それ以上のおしゃべりは慎んで、再び雑誌に目を落としながら、おしゃれなレストランに似合うおしゃれな会話ができたと悦に入っていました。
  しばらくして、「こちらにはよくいらっしゃるのですか」とカウンターの素敵な紳士の声がしたので、「お昼に2度来ましたが、朝は初めてです。Sさんは?」と言ったとき、素敵な紳士の表情が一瞬変わったのに、すぐ気が付きました。目の前の素敵な紳士は、Sさんではなかったのです。
  あわてて「大変失礼しました。Tさんでしたね」と即座におわびをしました。言い訳になりますが、SさんもTさんも同じ位のお年で、雰囲気もよく似ているのです。私は初めからSさんと思いこんでいたのです。
  それからまた少しお話をした後、Tさんは「またぜひ、ご一緒しましょう」と機嫌良く帰って行かれましたが、私はしばらく自己嫌悪に陥ってしまいました。おしゃれな気分も台無しです。
  名前を間違うのは相手に対してとっても失礼なこと。ずいぶん前から自分の記憶力は当てにならないと自覚していましたから、人の名前は間違ってはいけないと常々心がけてきたのですが…。
  私の父親が、若い頃からよく私と妹の名前を言い間違っていました。「父親なのに間違わないでよ」と思っていたら、今では私が、娘と妹の名前を言い間違うことがあるのです。これは脳の老化現象なのでしょうか。遺伝なのでしょうか。
それにしても近ごろ、身体のあちこちの機能の低下を実感するようになりました。
  同年代の友人たちとも、肩が痛いの、腰が痛いの、そういう会話をする回数が増えてきています。
  「いつまでも若くないんだよ。お酒はほどほどに。自分の身体を考えなさい。」と忠告をしてくれる親友は、やたら健康志向になり、深酒をしなくなってしまったので私は少々さびしくなりました。
  「年はとりたくない」と言う人が多いのですが、私は「年をとるのはいいことで、いい年をとっていきたい」と思っています。
  行きつけの居酒屋さんでよく会う人で、皆が「てっちゃん」と呼んでいる70才代の飲み友達がいます。
  「てっちゃん」は、お店を経営しているので昼間は仕事をしています。そして夜はいつも楽しくお酒を飲んでいます。
  「てっちゃん」がやってくると周囲の空気が和むのです。
  健康管理もバッチリで、休日にはゴルフを楽しみ、定期的にスポーツクラブにも通っています。
  末永くお酒を楽しむためには、適度な運動をしなくてはといつも思いながら実行できない私にとって、見習うべき先輩だといつも啓発されています。
ところで、電気設備も人間の身体と同じで、長期に使用していると劣化していきます。それを放置していると、重大事故につながることもあります。
  家電製品なら「壊れたら取り替えたらいい」ということで、ほとんどの場合はだいじょうぶでしょう。しかし高圧受電設備は、壊れる前に取り替えないと電気事故となり、地域一帯の多くの電気設備を停電させてしまう事態につながることがあります。
  私は仕事で電気設備の点検はしていませんが、点検担当者の作成した点検報告書をお客さまにお渡しして設備更新のお願いをすることがよくあります。
  高圧機器は点検で異常が見られなくても、更新推奨時期(日本電機工業会資料)を目安に早めの取り替えをお願いしています。
  更新推奨時期は気中開閉器が10年〜15年、高圧ケーブルが15年、変圧器は20年というふうになっています。
  電気設備は、使用環境や使用条件など、いろいろな条件で劣化の度合いが違うので、一律に「製造後○年になったので取り替えてください」と言うことができません。
  更新推奨時期よりずっと早く劣化が進むこともあり、取り替えのお願いをする時期の見極めは、点検担当者の腕にかかっていると言えると思います。
  高圧機器の取り替えをお願いすると、お客さまから「上司に説明するのに資料がほしい。その機器の老朽化が原因で発生した電気事故件数は年に何件になるのか」と聞かれることがあります。
  しかし、ほとんどの設備で電気事故につながる前に早めの取り替えを実施しているために、電気事故の件数はゼロに近いのです。
  私たち四国電気保安協会の職員は、お客さまの電気の安全を守るという使命感をもって仕事をしています。

  「ゲシュタルト崩壊」という言葉を最近憶えました。
  当たり前だと思えることをずっと考え続けていると人間の脳では「ゲシュタルト崩壊」という現象が起きるそうです。
  りんごが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見したニュートンは、当たり前だと思えることをずっと考えるうちに「ゲシュタルト崩壊」によって新しい発見ができたのだろうと推測されています。
  ふだん何も気にせず書いている文字、たとえば「あ」という字をずっと書き続けていると「あ」ってこんな字だったのだろうかと違和感を覚えたりすることがありますが、この現象が「ゲシュタルト崩壊」なのだそうです。
  また、自分の名前をずっと書き続けていると、自分の名前でないような気分になってきて「ゲシュタルト崩壊」を体験できるとのこと。
私は漢字を書きながら「こんな字だったのかな」と思うことが多くなってきましたが、記憶力の低下ではなく「ゲシュタルト崩壊」と言った方がかっこいいかなぁ。
  でもそのうち「ゲシュタルト崩壊」という言葉を忘れてしまうのは間違いないでしょう。
 
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